株式会社大一防水工業 / 代表取締役 上田 順司 氏

大阪府大東市の株式会社大一防水工業は、防水工事を中心に塗装工事、屋根工事などを行う特定建設業者である。個人宅からマンション、商業施設まで、あらゆる建物の工事を請け負う。昭和32年の創業以来培われた経験と技術に裏付けられた、他社にはない提案力が自慢だ。現在は創業者から数えて三代目となる、代表取締役の上田順司氏が経営を担っている。
大学を卒業するにあたって一般企業の就職活動もしましたが、結局は防水材のメーカーさんに修業という形で就職させていただきました。そこで学んでから、家業の会社に帰ってきたという経緯です。当初は現場の工事管理を担当させてもらっていて、そのうちに仕事を覚えてくると、自分で現場調査をして見積もりを作り、お客様に提案して受注につなげるということもやるようになっていきました。創業者の祖父は個人タクシーの運転手から転身して防水工事の職人になりましたが、私は作業員として現場で作業したことはないですね
いずれ自分が社を継ぐことは当然、理解していた。だから入社した当初から、自社内をマネジメントの観点で見ていたという。
先代である父の考え方は、作業員として働くとそちら寄りの気持ちが強くなって、営業的な考え方に影響を及ぼしてしまうというものでした。だから最初からあえて現場作業には関わらず、現場管理から始まりました。職人さんの気持ちだけをわかるのではなく、営業の気持ちも理解して、営業の考え方もしっかりと持って、経営はバランス良くやらなければいけない。父からはっきりと言葉にしてそう言われたわけではありませんが、口ぶりでそういうニュアンスのことはわかりました。それもあって、当初から経営的な観点で社内を見ていましたね
そうして三代目に就任したのは2015年7月1日。先代の父親は昭和の経営者らしく、剛腕を振るっていた。そうして会社を大きくしてきたことを認めながらも、同じやり方では時代にそぐわないことも認識していた。だからトップダウンで指示するより、自分たちで考えて行動することを促す方針へと切り替える。
父の時代は何かあれば怒って、怒られたほうもなぜ怒られたかを理解せず『すみません』と言ってやり直すというスタイルでした。それが続くとやがては、『どうやって怒られないようにしようか』という思考回路になってしまうんです。その繰り返しで成長するのかといえば、やはり伸びない。そういう人がウチの会社にもおられて、僕はその様子を見ていました。その人は絶対に面白くなかっただろうし、会社の雰囲気も悪い。そういったところは、反面教師にしたいなと思いましたね
指示をして、やらせるだけでは人は成長しない。だから自分で考えて、気づかせる。そのきっかけを与えることを大事にしている。
私が前に出るよりも、作業を管理している多数の社員に、自分たちの考えでやれるようにしていってもらいたい。こちらから一方的に言うのではなく、仕事を進める人たちが自分で考えて行動する。それが必要だと、私は思っています。そうでないと、社員さんは仕事にやりがいが持てないと思うんです

確立した企業理念を社内に浸透させ、人材の採用活動にも活用
変えたこともあれば、自身の代になって、新たに打ち立てたものもある。それは、企業理念の確立だ。
昨年に企業理念を、『私たちは未来に繋がる社会をまもり、躍進する会社です』と制定しました。防水工事も塗装工事も、みなさんが住まわれている建物をまもっていくためにするものです。みなさんは何十年も建物に住まわれるわけで、代々住むのか、だれかに売っていくのかはありますが、その建物は長く残っていく。私たちはそういう、社会の一部をまもることに貢献する仕事をしていますということなんです
【企業理念】

そのベースになっているのが、かねてから定めてあった経営理念である。
企業理念は、経営理念である『4つのダイイチ』のなかのひとつ『大切なあなたの財産まもります』をヒントに考えました。今まで大一防水工業がずっとやってきたことを、明文化したということなんです。これも含めた『4つのダイイチ』はどれも大事なことで、今も弊社の基本方針として掲げています。守り続けるために『4つのダイイチ』のなかにある、“挑戦ダイイチ”や“楽しさダイイチ”を続けて躍進していく。躍進したら、さらに未来につながる。そうやって建物を守っていくことを、ぐるぐると回転するようにしながら続けていく。企業理念はそういう方向で考えまして、それが私たちの会社には合っているなと思っています

企業理念は今後、月一回の営業会議などを通じて社内に浸透させていくほか、対外的な採用活動にもつなげていく考えだ。
そうですね。守り続けると言っている限りは、だれか大事な人間がずっと守り続けないといけない。そのためには、守ってくれる人が必要です。AIやデジタルだという時代になりましたが、防水の仕事は人の手がないと成り立ちません。だから、余計に人が必要なのですが……。こういうご時世なので、なかなか難しいところはありますね
現場作業は協力会社に依頼し、大一防水工業の社員は上田社長も含めて4人。現場作業員ではなく、施工管理や営業などを行うマネジメント側の人材を求めている。業界経験は問わないが、自分で考えて行動に移せる人が望ましいという。
ノルマを与えてもらえないと難しいという人のほうが多いかもしれませんし、与えられたノルマをこなすことも、もちろん大事です。だけどやはり、自分自身でこういう風にしたいんだと、考えられる人がいいですね。最初は言われて学ぶことから始まりますが、自分で仕事ができるようになると、結構な自由さがあります。自分自身で考えて、スケジュールを立てて動く。わからなかったら、周りの人に聞いて学んでいく。この仕事に就くと物事を自分自身で考えられるようになりますし、自分らしさが出せると思います
▼ビフォー ▼アフター

▼ビフォー ▼アフター

▼ビフォー ▼アフター

ひとり立ちを果たせば、裁量も多く与えられる。ひとつのプロジェクトを自分の采配で動かして完工まで持っていくのは、とてもやりがいがありそうだ。
それはあると、思いますよ。大きな現場になるほどいろんな人が関わるので難しいところもありますが、それをクリアしていく過程で成長できていく。ひとり立ちできるまでは、概ね2年くらいですかね。そこを乗り越えれば新しい景色が見えてきますし、もちろん待遇面でも応えていきます。なのでぜひ、挑戦していただきたいですね
みなさんの役に立てる地道な仕事を繰り返して、気付いたら100年が理想
確たる企業理念を確立した今、大一防水工業は今後、どういったことを目指すのか。
今まで積み重ねたノウハウを、もっといろんな方に提供させていただける場があればと思っています。それを設けるための体制を作ってきていますので、それに賛同してくれる新たな方、新入社員が来てくれればいちばんいいですね。その先は100年まで頑張ろうとか年数を決めてしまうと、それが目標になってしまう。今まで大一防水工業がやってきた、みなさんの役に立てる地道な仕事をずっと繰り返していって、気付いたら100年経ちましたよねという感じがいいのかなと思います。当たり前のことを続けていくわけですが、まあそれが難しいのですけれどね(苦笑)
今後いずれ、上田社長から次に代替わりする時がやって来る。次代になにを残せれば、社長としての自分の働きを認めることができるのか。
私がいなくなって今働いてる人がみんないなくなっても、これまでに培ってきた大一防水工業の考え方が、次の世代にすべて伝わっている。職人さんの技術もしっかりと継承されていて、大一防水工業の考え方が途切れないようにできていれば、それがいちばんかなと思いますね。そこに去年立てた企業理念が受け継がれていれば、すごく理想的です。今後、技術や材料が変わっても建物がある限り、防水の仕事はなくなりません。『未来につながる社会をまもる』という理念のバトンを、次の代にもその先にも、つないでいきたいですね

