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学校だけが居場所じゃない。自身が救われた「第三の場所」を、いまの子どもたちへ
大阪市城東区医療・介護・福祉新着

学校だけが居場所じゃない。自身が救われた「第三の場所」を、いまの子どもたちへ

2026.09.03
株式会社しずくそう

株式会社しずくそう / 代表取締役 下元 啓大 氏



学校だけが居場所じゃない。自身が救われた「第三の場所」を、いまの子どもたちへ

現代社会には、さまざまな「生きづらさ」があふれている。不登校、発達の特性、身体・知的障がい。さらには生活困窮や引きこもり、ヤングケアラー(※1)といった複合的な生きづらさを抱える人も多い。こうした悩みに応えて支援につなげる「うちのこと相談センター」と、子どもを対象とした訪問型療育「わがやのさぽーと」、2つの事業を展開するのが、2025年11月に設立された株式会社しずくそうだ。その原点は、代表の下元啓大氏が中学時代に「学校以外の居場所」を経験したことにあった。

※1 ヤングケアラーとは、本来は大人が担うと想定されているような家事や家族の世話、介護などを、日常的に行っている子どもや若者のことです。勉強する時間や遊ぶ時間が奪われ、心や体に大きな負担がかかっている状態を指します。


ボランティアで得た「必要とされる実感」


寝屋川市で育った下元氏は、中学3年生の頃、いじめなどをきっかけに学校へ行きづらくなった。そんな時、担任の先生から思いがけない提案を受ける。
「学校に無理して来なくていいから、別の場所にボランティアとして行ってみたら?と、勧めてくださったんです」

先生がつないでくれたのは、箕面市社会福祉協議会(※2)のボランティアセンターであった。ここを起点として、高齢者施設の訪問や地域の祭りの手伝いなど、さまざまな活動に参加した。同世代とのコミュニケーションが苦手だった下元氏にとって、年上の人たちと接するボランティアは安心できる場所でもあった。

※2 箕面市社会福祉協議会は、地域住民やボランティア、福祉関係機関と連携し、誰もが安心して暮らせるまちづくりを目指す民間の営利を目的としない社会福祉法人です。https://minoh-syakyo.or.jp/

学校だけが居場所じゃない。自身が救われた「第三の場所」を、いまの子どもたちへ

関わった方に『ありがとうね』と言ってもらえたりして、必要とされている実感がありました。学校というコミュニティの中では、なかなか見出せなかった自分の存在意義というか、居場所みたいなものを、ボランティアを通して見つけることができたんです

高校は通信制高校に進学した。毎日通学するスタイルだったが、マイペースで学ぶことができた。不登校を経験した子、人間関係につまずいた子、障がい特性のある子など、さまざまな背景を持つ同世代がいた。何かしらの生きづらさを抱えた子どもたちが集まる中で、思いを分かち合い、自信をつけていくという環境であった。
そこで得た経験から、『自分でも通信制高校をつくりたい』と考えるようになったんです。最終的には変わっていったんですが、当時の目標としてはそうでした

大学進学ではビジネス学部を選んだ。自分で学校を立ち上げ、続けるためには経営を学ぶ必要があると考えたからだ。

独立当初の主軸は「うちのこと相談センター」



大学卒業後は学習塾勤務からキャリアをスタートした。その後、放課後等デイサービス、生活介護などの福祉サービス、建築土木の事務職を経て、再び福祉の現場へと、5〜6社を経験してきた。直近では相談支援専門員として、障がいのある子どもや家族の相談に携わっていた。
一見すると幅広い職歴である。だが下元氏にとっては、その一つひとつが現在の仕事につながる経験であった。社会福祉士や、児童指導員任用資格、児童発達支援管理責任者などの資格も取得した。
仕事をする中で、自分はこう取り組みたいと思っても、法人にいる以上は法人の方針があります。なかなか自分の裁量で、というわけにはいかない。もう少し子育て世帯の方々に寄り添った支援を、自分で組み立てたいという思いが、最終的に独立という選択肢につながりました

独立を考えはじめた当初は、放課後等デイサービスなどの通所型事業所を開くことも考えていたが、報酬改定や人員配置などを鑑みるなかで別の形を模索した。前職で知り合った職員を数人誘い、ファミリー層が多い城東区で、2025年11月25日に株式会社しずくそうを設立した。
立ち上げ時の主軸となったのが「うちのこと相談センター」である。例えば、発達特性のある子どもの進路をどうすればいいのか。一人暮らしや就労はできるのか。生活も困窮している……。そういった相談を丸ごと受けとめ、問題点や必要な手続きを整理し、専門機関へと確実につなぐ。障がい福祉サービスを利用した「障害児相談支援」あるいは「計画相談支援」という形を取れれば、自己負担なく支援が受けられる。

学校だけが居場所じゃない。自身が救われた「第三の場所」を、いまの子どもたちへ

一方で、こうした相談支援の現場に立つほどに、「相談だけでは届かないもの」も見えてきた。そして生まれたのが、もう一つの事業である「わがやのさぽーと」である。

柔軟に利用できる訪問型療育「わがやのさぽーと」



「わがやのさぽーと」は、未就学児から学齢期の子どもを対象とした訪問型療育の自費サービスである。家庭教師が勉強を教えに行くように、このサービスでは訪問支援員が自宅まで療育に行く。医師の診断や「受給者証」がなくても即座に利用できる。
「訪問」にこだわったのには理由があった。そもそも、通所型だと行き渋りが起こる。さらには「再現性」と「家族みんなの笑顔のため」である。

「発達特性のあるお子さんのご家族からよく聞く困りごとが、自宅でのかんしゃくです。学校や放課後等デイサービスでは落ち着いて過ごせるのに、家に帰ると大変になる。かんしゃくって、本人がうまく思いを表現できない時の、伝え方の一つなんですよね。支援者が実際にご家庭に行けば、きょうだいとの関係なども見ながら、環境をどう変えればいいか、ご家族はどう声をかければいいかをその場でお伝えできます。子ども自身も、家でなら安心して療育に取り組める。その間、親御さんは他のきょうだい児さんとゆっくり関わることもできます」

また、今は共働きの家庭が多いことから、利用時間の幅も広げた。
夕食後の時間帯や、土・日・祝も対応しています。放課後等デイサービスや、児童発達支援が終わって帰ってきてから、この訪問療育を使っていただくことも可能です

療育時間の長さも、60分と90分から選べる。2コマ連続で、自立に向けた外出支援に充てるといった使い方もあるという。加えて、大阪府の子育て支援事業で、子育て応援パスポートとして知られる「まいど子でもカード」を提示すれば、初回アセスメント料が半額になる仕組みも設けている。

柔軟に利用できる訪問型療育「わがやのさぽーと」

学校だけが居場所じゃない。自身が救われた「第三の場所」を、いまの子どもたちへ

「うちのこと相談センター」と「わがやのさぽーと」は、別々のサービスでありながら、相互に連携する。「うちのこと相談センター」では、まず公的な制度による支援を優先して案内し、それでも自費サービスを利用したいという希望があれば「わがやのさぽーと」につなぐ。一方、子どもについての相談から、夫婦関係や介護などの課題が見えてくれば、家族全体の相談支援につながるケースもある。
公的な支援と自費の支援。それぞれの役割を持ちながら、家族を丸ごと支える。こうした考え方が、2つのサービスをつないでいる。

本当に支援を必要とする人に届ける仕組みづくり



「わがやのさぽーと」は自費サービスであるため、生活困窮世帯などが利用しにくいという課題もある。そこで下元氏が考えたのが「社会循環型」の仕組みである。
まず、企業の福利厚生として「わがやのさぽーと」を導入してもらい、企業から月額の固定費などを受け取る。その収益の一部を、生活困窮世帯への割引原資として活用する。企業との契約を増やすことで収益を安定させ、本当にサービスを必要としている家庭にも還元することができる。今後はこの仕組みをさらに広げていきたいという。

学校だけが居場所じゃない。自身が救われた「第三の場所」を、いまの子どもたちへ

下元氏が目指すのは、子どもたちが「こうあるべき」という一つの答えに合わせる社会ではない。
不登校の子どもに対しても、「学校に行こう」と急かすのではなく、今のまま過ごしたいのであれば、まずはその時間をどう過ごすのかを考える。行ってみたい場所があるなら、一緒に行ってみる。大切なのは、本人がどうしたいのかを聞くことだ。
私は、学校にこだわらなくていいと思っています。あくまでも本人がつながりたい『第三の場所』みたいなところでいい。ただ、何らかの形で社会とつながることは必要だと思うんです

その言葉は、下元氏自身の人生とも重なる。
中学時代、学校という場所では見つけられなかった「自分の居場所」を、ボランティアという第三の場所で見つけた。そこで「ありがとう」と言われ、必要とされる経験をした。
今度は自分が、誰かにとっての「第三の場所」をつくる側になる。
まずは大阪市内から、地元・寝屋川を含め、支援できる地域を広げていく。そして将来的には、障害の有無や年齢にかかわらず、誰もが自然に集まり、一緒に遊び、つながれる地域の場づくりにも取り組みたいという。
自分に合った場所で, 自分らしく人とつながる。その選択肢を増やすことが、下元氏の目指す支援なのだ。

株式会社しずくそう
本社:大阪市城東区中央3丁目7-18 シャルマンコーポ野江第2期 117号室
オフィシャルサイト:https://pcs-shizukuso.com/